環境管理の現場で活躍する技術者にとって、公害防止管理者の資格は重要な資格です。
公害防止管理者水質1種、大気1種の取得を狙う場合、4種から1種へステップアップするのは、勉強の負荷を下げる点でも、合格率を上げる点でもとても有効です。
本記事では公害防止管理者4種から1種へのステップアップについて、その方法やメリットまで徹底的に解説します。
4種と1種の違い:選任できる施設の範囲が大きく異なる
公害防止管理者は「大気関係」と「水質関係」でそれぞれ1種から4種まであります。
最も大きな違いは、選任できる施設の範囲です。
- 第1種:全ての公害発生施設に選任可能(有害物質を扱い、排出量が多い大規模施設を含む)
- 第4種:限られた施設にのみ選任可能(有害物質を扱わず、排出量も少ない小規模施設)
具体的に水質関係で見ると、1種は有害物質を扱い排水量が1日1万m³以上の大規模施設に選任できるのに対し、4種は有害物質を扱わず排水量も少ない施設に限定されます。
この違いは職場でのポジションや責任、そして年収にも大きく影響します。
公害防止管理者1種取得でキャリアと年収はどう変わる?具体的データを公開
公害防止管理者1種を取得することで、以下のようなキャリアチェンジが可能になります。
年収アップの可能性
- 公害防止管理者の平均年収:350万〜450万円
- 1種資格保有者の年収:500万〜700万円も可能
- 管理職へのステップアップ:部長職で700万円以上も
求人サイトのデータを見ると、公害防止管理者1種の資格を持つ技術者への求人では、年収500万円以上のオファーが多数見られます。
キャリアの広がり
1種資格を持つことで、以下のようなキャリアの選択肢が広がります:
- 大規模工場の環境管理責任者としての活躍
- 公害防止主任管理者へのステップアップ
- 環境コンサルタントとして独立
- 転職市場での価値向上(専門性の高い人材として評価)
公害防止管理者として経験を積み、「公害防止主任管理者」の資格を取得することも、キャリアアップの有効な方法です。
公害防止管理者1種の合格率は1.6%!? 4種から効率的に合格する戦略
公害防止管理者1種の試験は難関です。
特に科目免除なしでの挑戦は、令和5年度の大気関係第1種の場合、合格率わずか1.6%という厳しい現実があります。
では、4種から1種へ効率的にステップアップするには、どのような勉強法が効果的でしょうか?
実は、区分合格による免除という制度を利用することで第1種試験のハードルを大きく下げることができます。
区分合格による免除の解説
区分合格による免除とは、区分に合格した場合、次回以降、他の区分の受験をする際に、以前合格した区分に含まれる科目を免除される仕組みのことです。
以下で詳しく解説します。
対象者の条件
区分合格者とは:
- 資格取得済み:実際に公害防止管理者の資格を取得した方
- 合格証書送付済み:正式な合格証書が発行・送付された方
- 時期制限:平成18年度以降の国家試験合格者
単なる科目合格ではなく、完全に区分に合格し資格を取得した方が対象です。
申請方法の詳細
- 合格証書番号の使用
- 合格証書に記載されている8桁の番号を使用
- 科目合格の10桁管理番号とは異なる番号体系
- 申請タイミング
- 出願時のみ申請可能
- 願書に8桁番号を記載することで免除申請
- 後から追加は一切不可
区分合格時の合格証書記載の8桁の番号が必要です。しっかり取っておきましょう。また、出願時に忘れずに申請しましょう。
免除できる科目の範囲
- 合格した試験区分に含まれる科目のうち、同一科目名の科目が免除対象
- 別の試験区分を受験する際に適用
4種から1種にステップアップする具体的な戦略
水質4種合格者の場合:
水質4種で合格した場合、受験した科目は以下です。
- 公害総論
- 水質概論
- 汚水処理特論
これらの科目と同一名称の科目があれば、他区分(例:水質1種、大気4種など)受験時に免除申請が可能です。
例えば、水質1種を受験する場合、上記の3科目は免除されるので、残りの
- 水質有害物質特論
- 大規模水質特論
に合格すれば、水質1種に合格することができます。
このように4種に合格してから1種に合格することで、同時受験科目数を分散させることができます。少ない科目に集中して勉強することもできるので、合格のハードルをぐっと下げることができます!
例えば、5科目同時に受けて、すべての科目の正答率が50%の場合、公害防止管理者試験の合格基準は60%以上なので、すべての科目で不合格になりますが、同じ労力で3科目だけ集中して勉強すれば、3科目すべてで60%以上とることは難しくないでしょう。あとは残りの2科目に集中すればいいだけです。
このように、受験時期を分散し、一度に受験する科目を減らして、1科目への勉強量を集中させることで、合格へのハードルをぐっと下げることができます。
有効期限について
区分合格の大きなメリット:
- 有効期限なし(3年制限がない)
- いつでも免除申請が可能
- 資格取得から何年経過しても利用可能
科目合格の場合は有効期限がありますが、区分合格の場合、有効期限がありません。これはうれしいですね。
重要な注意事項
- 申請忘れのリスク
- 出願時に申請を忘れると免除追加は一切不可
- 再受験が必要になる可能性
- 科目名の完全一致
- 科目名が完全に同一である必要
- 類似科目名では免除対象外
- 複数区分受験時の注意
- 同時に複数区分を受験する場合は、それぞれで免除申請が必要
効率的な勉強時間の確保
公害防止管理者資格の取得には一般的に100〜150時間程度の勉強が必要です。
- 平日:1時間
- 休日:3時間 という配分で約2〜3ヶ月の勉強期間が目安となります。
過去問と要点の把握に集中する
「ただ教科書を読む」だけでは合格は難しいです。効率的な学習のポイントは:
- 過去問を繰り返し解く
- 出題頻度の高いテーマを重点的に学習
- 計算問題は解き方のパターンを身につける
できるだけ最新版のテキストを使って、例題や過去問の数をより多くこなすことに注力しましょう。
公害防止管理者取得後のキャリアプラン構築
資格取得はゴールではなく、キャリアアップのためのスタートラインです。
1種取得後、どのようにキャリアを築いていくべきでしょうか?
ステップ1:社内での立場を強化する
資格取得を上司に報告し、より重要なプロジェクトや大規模施設の管理業務を担当させてもらえるよう交渉しましょう。
ステップ2:関連資格の取得を検討する
公害防止管理者の複数区分(大気と水質の両方など)や公害防止主任管理者の取得を目指すことで、さらに市場価値を高められます。
ステップ3:専門性を深める
学会参加や研究発表など、専門知識をさらに深める活動に参加することで、環境管理のプロフェッショナルとしての評価を高めることができます。
まとめ:公害防止管理者1種を取得しよう!
公害防止管理者4種から1種へのステップアップは、単なる資格取得以上の意味を持ちます。環境技術者としての可能性を大きく広げるステップアップです。
難関試験ではありますが、計画的な勉強と区分による科目免除合格制度の活用により、着実に合格を目指すことが可能です。
そして合格後は、年収アップと責任ある立場での活躍という大きなリターンが待っています。
環境への意識が高まる現代社会において、公害防止管理者1種の資格は、あなたのキャリアを加速させる強力な武器となるでしょう。
4種から1種へのステップアップ計画を始めてみませんか?
【よくある質問】公害防止管理者4種から1種へのステップアップQ&A
Q: 1種の取得にかかる平均的な期間はどれくらいですか?
A: 科目別合格制度や、区分合格による科目免除を利用して、約2〜3年かけて取得する方が多いです。一度に全科目合格を目指す場合は、約3〜6ヶ月の集中勉強が必要です。
Q: 公害防止管理者1種の資格手当の相場はいくらですか?
A: 企業によって異なりますが、月額2,000円〜20,000円程度の手当が支給されるケースが多いようです。企業の規模や業種によって大きく変わります。




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