製造業や工場で働く30代〜40代の方で、環境関連の資格取得によるキャリアアップを考えているかたも多いのではないでしょうか?
特に「公害防止管理者」と「エネルギー管理士」という2つの資格は、工場勤務者にとって非常に価値のある資格として知られています。
しかし、
- 「どちらの資格を先に取るべきなのか?」
- 「自分のキャリアにはどちらが有利なのか?」
- 「資格取得後の年収アップはどれくらい期待できるのか?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、公害防止管理者とエネルギー管理士の資格を徹底比較し、あなたのキャリア状況に応じた最適な資格取得戦略を解説します。
公害防止管理者とエネルギー管理士とは?基本情報と違い
まずは両資格の基本情報を比較してみましょう。
比較項目 | 公害防止管理者 | エネルギー管理士 |
---|---|---|
目的 | 公害の発生を予防するための検査、点検、整備など | 省エネルギー化を推進するためのエネルギー管理 |
資格区分 | 13区分(大気関係、水質関係、騒音・振動関係など) | 熱分野と電気分野の2分野 |
選任義務 | 公害防止管理者法における「特定工場」 | エネルギー使用量が原油換算で3,000kl以上の指定工場 |
試験実施 | 年1回(10月) | 年1回(8月) |
受験資格 | なし(誰でも受験可能) | なし(誰でも受験可能) |
合格率 | 約20〜30% | 約30〜37% |
取得後の平均年収の目安 | 500〜600万円程度 | 400〜700万円程度 |
公害防止管理者の特徴
公害防止管理者とは、公害が発生する可能性がある工場等の施設に常駐して大気や水質などの検査を行い、公害発生を防止する役割を担う資格です。
資格区分は全部で13あり、大気関係(第1種〜第4種)、水質関係(第1種〜第4種)、ダイオキシン類関係、騒音・振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、公害防止主任管理者に分かれています。それぞれの区分によって業務内容や対象となる施設が異なります。
主な業務内容は以下のとおりです:
- 専門分野に関する原料・燃料などの検査
- 排出された煙・汚水などの濃度測定や記録
- 施設の操作・点検・整備
- 従業員の教育
- 事故発生時の対応
エネルギー管理士の特徴
エネルギー管理士は、電力や燃料などのエネルギーを多く使う工場の省エネルギー化と、地球環境の保全を支える国家資格です。かつての「電気管理士」と「熱管理士」が一本化されました。
製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5業種において、エネルギー使用量が多い工場で必要とされる資格で、指定工場ではエネルギー使用量に応じてエネルギー管理士の有資格者を1〜4人選定する必要があります。
試験は熱分野と電気分野の2分野で構成されており、どちらか一方を選択して受験します。免許取得には国家試験合格後に1年間の実務経験が必要です。
公害防止管理者とエネルギー管理士の違い
両資格は目的と業務内容が異なります。
公害防止管理者は「公害の予防」に重点を置き、エネルギー管理士は「省エネルギー化の推進」に焦点を当てています。しかし、どちらも環境保全に関わる重要な資格であり、製造業や工場での需要が高い点は共通しています。
どちらの資格を先に取得すべきか?
「公害防止管理者」と「エネルギー管理士」のどちらを先に取得すべきかは、あなたの現在の状況や目標によって異なります。以下のケース別に解説します。
ケース1: 工場の設備管理・施設管理を担当している場合
おすすめの取得順:公害防止管理者(大気または水質関係)→ エネルギー管理士
設備管理の観点から、まず公害発生の防止に関する知識を身につけることで、日常業務での即戦力となります。
公害防止管理者は試験範囲も比較的限定的で、現場経験のある方なら取り組みやすい傾向があります。その後、より専門性の高いエネルギー管理士に挑戦するのが効率的です。
ケース2: エネルギー関連の業務に従事している場合
おすすめの取得順:エネルギー管理士 → 公害防止管理者
既にエネルギー関連の知識や経験がある場合、専門性を活かしてまずエネルギー管理士の資格を取得することをおすすめします。
電気設備やボイラー設備などのエネルギー設備に関わる業務をしている方は、エネルギー管理士試験の内容と重なる部分が多いでしょう。資格取得後、環境管理の観点から公害防止管理者にも挑戦することで、より包括的なスキルセットを身につけられます。
ケース3: 製造ラインや品質管理部門の方
おすすめの取得順序:公害防止管理者(業種に関連する区分)→ エネルギー管理士
製造プロセスや品質管理に携わっている方は、まず自社の業種に関連する公害防止管理者(例:化学工場なら水質関係、製鉄所なら大気関係など)を取得するのが合理的です。製造プロセスと公害防止は密接に関連しているため、現在の業務知識を活かしやすくなります。
ケース4: キャリアチェンジや昇進を視野に入れている場合
おすすめの取得順:市場価値の高いエネルギー管理士 → 特定の業種に特化した公害防止管理者
転職やキャリアアップを目指す場合、まず市場価値の高いエネルギー管理士の資格取得を目指すことで、より多くの選択肢を得られます。
特に最近は省エネや環境への配慮が重視される傾向にあり、エネルギー管理士の需要は高まっています。その後、転職先や昇進後のポジションに合わせて必要な公害防止管理者の区分を選択して取得するのが効果的です。
注意点
資格取得を検討する際は、自社の「特定工場」や「指定工場」の該当状況も確認しましょう。法的に選任が義務付けられている資格があれば、そちらを優先すべきです。
また、社内でどちらの資格のニーズが高いかを上司や人事部に確認するのも良い判断材料になります。
両資格取得のメリットと年収アップの可能性
公害防止管理者とエネルギー管理士の資格取得には、様々なメリットがあります。特に気になる年収面でのメリットも含めて解説します。
公害防止管理者取得のメリット
- 給与面→資格手当の獲得:
多くの企業では公害防止管理者の資格保有者に対して毎月5,000円〜20,000円程度の資格手当を支給しています。 - キャリア→特定工場での必須資格:
法律で選任が義務付けられているため、安定した需要があります。特に大気関係・水質関係の第1種は価値が高い傾向にあります。 - 転職→転職市場での評価:
環境管理部門への異動や転職の際に有利になります。環境関連の業務経験が証明できるため、キャリアの幅が広がります。 - 業務→責任ある立場:
公害防止管理者は法定資格であるため、有資格者は工場内で一定の地位と発言力を持つことになります。
エネルギー管理士取得のメリット
- 給与面→資格手当と昇給:
エネルギー管理士の資格保有者に対して毎月10,000円〜30,000円程度の資格手当を支給している場合が多いです。 - キャリア→高い専門性と市場価値:
エネルギーコストの削減は企業の収益に直結するため、エネルギー管理士の専門知識は高く評価されます。省エネ関連プロジェクトのリーダーに抜擢されるケースも多くあります。 - 転職→幅広い業界での需要:
製造業だけでなく、エネルギー供給業、建設業、コンサルティング業界など、様々な分野で需要があります。 - 将来性→カーボンニュートラルの追い風:
2050年カーボンニュートラル宣言以降、エネルギー管理士の需要と重要性は更に高まっています。
年収アップの可能性
両資格取得による具体的な年収アップの可能性を見てみましょう。
項目 | 公害防止管理者 | エネルギー管理士 | 両資格保有 |
---|---|---|---|
平均年収 | 350〜450万円 | 400〜700万円 | 450〜800万円 |
資格手当(月額) | 5,000〜20,000円 | 10,000〜30,000円 | 15,000〜50,000円 |
昇進可能性 | 部門リーダークラス | マネージャークラス | 部長・工場長クラス |
年収アップの例
ある化学メーカーの設備管理担当者(35歳)の例:
- 資格取得前の年収:420万円
- 公害防止管理者(大気1種)取得後:450万円(資格手当月15,000円)
- エネルギー管理士(熱分野)追加取得後:520万円(資格手当増額・昇進)
- 2年後、環境管理部門のマネージャーに昇進:620万円
このように、戦略的に資格を取得することで、数年間で大きな年収アップを実現できる可能性があります。ただし、資格取得だけでなく、その知識を実務で活かし成果を出すことが重要です。
資格取得の難易度と効率的な勉強方法
両資格はいずれも専門性の高い国家資格ですが、試験の特性や難易度は異なります。効率的に合格するための勉強法を紹介します。
公害防止管理者試験の難易度と特徴
- 合格率:約20〜30%(区分によって異なる)
- 試験日程:毎年10月の第1日曜日
- 科目免除制度:科目合格制があり、合格した科目は3年間受験が免除される
- 難易度の順:一般に「大気関係第1種>水質関係第1種>大気・水質関係第2種>その他区分」の順に難しい
エネルギー管理士試験の難易度と特徴
- 合格率:約30〜37%
- 試験日程:毎年8月上旬(7月下旬〜8月上旬の日曜日)
- 選択分野:熱分野と電気分野のどちらかを選択
- 試験形式:マークシート方式の筆記試験
- 難易度の比較:一般に電気分野よりも熱分野の方が合格率が高い傾向がある
公害防止管理者の効率的な勉強法
STEP 1: 区分選択と教材選び
自分の職場や経験に近い区分を選ぶことがポイントです。
例えば、水処理関連の経験があれば水質関係、ボイラーや排ガス処理に関わる経験があれば大気関係がおすすめです。公害防止管理者のテキストと過去問集を用意しましょう。
STEP 2: 基礎知識の習得(3〜4ヶ月前から)
まずはテキストを通読し、基本的な知識を身につけます。特に、公害総論、環境法規、公害防止技術などの共通科目は早めに押さえておきましょう。
STEP 3: 専門科目の集中学習(2〜3ヶ月前から)
大気関係なら「ばい煙特論」「ばい煙防止技術」、水質関係なら「水質特論」「水質汚濁防止技術」など、専門科目を集中的に学習します。計算問題は繰り返し練習しましょう。
STEP 4: 過去問演習(1〜2ヶ月前から)
過去5年分の問題を繰り返し解き、出題傾向と解法パターンを把握します。間違えた問題は、なぜ間違えたのかを理解することが重要です。
エネルギー管理士の効率的な勉強法
STEP 1: 分野選択と教材選び
熱分野は熱力学や流体力学の知識が、電気分野は電気工学の知識が必要です。自分の専門や経験に近い方を選択するのが効率的です。
電験三種の資格を持っている方は、電気分野が有利になることが多いです。
STEP 2: 基礎学習と計算練習(4〜6ヶ月前から)
エネルギー管理士は計算問題の比重が高いため、基本的な公式や計算方法をしっかり理解することが重要です。熱分野なら熱力学、流体力学、伝熱工学の基礎を、電気分野なら電気理論、電気機器、電力応用の基礎を学びましょう。
STEP 3: 過去問演習(2〜3ヶ月前から)
過去問は何度も繰り返し解くことが重要です。特に、計算問題は解法パターンを覚えるまで反復練習することをおすすめします。
STEP 4: 弱点補強と総仕上げ(1ヶ月前から)
苦手分野を集中的に補強しましょう。また、時間配分の練習も重要です。実際の試験時間を意識して模擬試験を行い、時間内に解ききる練習をします。
独学と通信講座の選択
両資格とも独学での合格も可能ですが、特に初めて受験する場合や、理工系の知識に不安がある場合は、通信講座の活用も検討すべきです。
通信講座では、重要ポイントの絞り込みや解法テクニックなどを効率的に学べるメリットがあります。
また、解説動画があると理解が進みやすくなります。費用対効果と自分の学習スタイルを考慮して選択しましょう。

資格取得後のキャリアパスと将来性
公害防止管理者とエネルギー管理士の資格を取得した後、どのようなキャリアの可能性が広がるのでしょうか。両資格のキャリアパスと将来性について解説します。
公害防止管理者の資格取得後のキャリアパス
- 社内→環境管理部門への異動・昇進:
環境管理や安全管理部門のリーダー職に就くケースが多く見られます。特に、第1種の資格保有者は責任ある立場に就きやすい傾向にあります。 - 社外→環境コンサルタントへの転身:
公害防止の専門知識を活かして、環境コンサルタント企業への転職も可能です。企業の環境対策をサポートするコンサルタントとして活躍できます。 - 独立→環境測定分析業の立ち上げ:
十分な経験を積んだ後、環境測定や分析を行う会社を設立するケースもあります。特に、水質や大気の測定分析は需要が安定しています。 - 関連資格→環境計量士への発展:
公害防止管理者の知識を基盤に、環境計量士(濃度関係)の資格を追加取得し、公的な環境測定業務に携わるキャリアパスもあります。

エネルギー管理士の資格取得後のキャリアパス
- 社内→省エネプロジェクトリーダー:
工場やビルの省エネルギー化プロジェクトのリーダーとして活躍できます。経営層にも近い立場で提案を行うケースも多くあります。 - 専門職→エネルギー診断士:
工場やビルのエネルギー使用状況を診断し、改善策を提案する専門職に就くことができます。省エネ診断は法的にも求められるケースが増えています。 - 転職→エネルギーサービス企業(ESCO):
省エネサービスを提供するESCO事業者への転職も人気のキャリアパスです。専門知識を活かしたビジネス展開が可能です。 - コンサル→カーボンニュートラルコンサルタント:
脱炭素社会の実現に向けた企業の取り組みをサポートするコンサルタントとして活躍するキャリアも広がっています。
将来性と展望
環境関連資格の将来性について、重要なポイントをいくつか挙げます。
公害防止管理者の将来性
- 法的義務による安定した需要
- 環境規制の強化による重要性の維持
- 特に大気と水質の資格は需要が高い
- 海外進出企業での需要拡大
エネルギー管理士の将来性
- カーボンニュートラル政策による需要増
- エネルギーコスト上昇による重要性の高まり
- 再生可能エネルギー分野への展開
- 国際的な環境規制への対応ニーズ
今後の需要はある?
2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、今後はより多くの企業がエネルギー管理と環境対策に注力することが予想されます。
特に、エネルギー管理士は脱炭素社会の実現に向けたキーパーソンとなる可能性が高く、需要の増加が見込まれます。
公害防止管理者も環境保全の観点から引き続き重要な資格であり続けると予測されます。
両資格を持つことによる相乗効果
公害防止管理者とエネルギー管理士の両方の資格を持つことで、単に2つの資格を持つ以上の価値が生まれます。その相乗効果について解説します。
知識と専門性の相乗効果
- 総合的な環境管理能力:公害防止(排出管理)とエネルギー管理(使用管理)の両面から環境問題に対応できる総合的な視点を持てます。
- プロジェクト推進力の向上:省エネと公害防止を同時に考慮した環境改善プロジェクトを推進できるため、より効果的な提案が可能になります。
- 技術的知識の補完:例えば、公害防止管理者の知識(排ガス処理など)とエネルギー管理士の知識(燃焼効率など)は相互に補完し合うため、問題解決能力が高まります。
キャリア面での相乗効果
- 昇進・昇格の可能性向上:両資格を持つことで、環境管理部門のマネージャーや工場長などの上位職への昇進機会が増えます。
- 転職市場での価値:両方の専門性を持つ人材は希少であり、転職市場での評価も高くなります。特に環境コンサルティング企業では重宝されます。
- 業務範囲の拡大:公害防止とエネルギー管理の両方を担当できるため、社内での役割も広がり、様々なプロジェクトに関わる機会が増えます。
相乗効果を最大化するポイント
両資格の知識を単に持っているだけでなく、それらを統合して活用することが重要です。
例えば、省エネ対策が公害防止にどう影響するかを考慮したプロジェクト提案や、環境負荷低減と生産性向上を両立させる取り組みなど、総合的な視点での業務遂行を心がけましょう。
また、社内で両資格の知識を活かした勉強会や研修を開催することで、自分の存在価値をアピールするのも効果的です。
あなたのキャリアを変える環境資格取得
公害防止管理者とエネルギー管理士は、環境分野でのキャリアアップに欠かせない資格です。戦略的に資格取得を進めることで、年収アップとキャリア発展のチャンスが広がります。
資格取得の第一歩として、まずは参考書や通信講座などの情報収集から始めてみましょう。
まとめ:着実なキャリアアップのための資格戦略
公害防止管理者とエネルギー管理士の資格比較と取得戦略について解説してきました。最後に、重要ポイントをまとめます。
それぞれの資格の特徴とおすすめの人
公害防止管理者がおすすめの人
- 環境管理、安全管理に関わる業務に従事している方
- 水質管理や大気管理などの経験がある方
- 比較的短期間で資格取得を目指したい方
- 特定工場で公害防止に関わる業務をしている方
エネルギー管理士がおすすめの人
- 設備管理やエネルギー関連の業務経験がある方
- 電気やボイラーなどの専門知識を持つ方
- キャリアアップや転職を積極的に考えている方
- 省エネやカーボンニュートラルに関心がある方
効果的な資格取得戦略
- 自分の経験と強みを活かせる資格から取得する
現在の業務や過去の経験に近い分野の資格から始めると、効率的に学習できます。 - 会社のニーズを考慮する
自社が特定工場や指定工場に該当するか確認し、法的に必要とされる資格を優先的に取得しましょう。 - 長期的なキャリアプランを立てる
5年後、10年後のキャリア目標を設定し、そこから逆算して必要な資格を計画的に取得していきましょう。 - 学習効率を高める
独学が難しい場合は通信講座の活用も検討し、効率的に学習を進めましょう。両資格には一部重複する知識もあるため、相互に活かせる部分もあります。 - 資格を活かす場を積極的に作る
資格取得後は、その知識を活かせるプロジェクトや業務に積極的に関わり、実績を作ることが重要です。
公害防止管理者とエネルギー管理士は、いずれも環境分野における重要な資格です。どちらを先に取得するかは、あなたの現在の状況や将来のキャリア目標によって異なりますが、長期的には両方の資格を持つことで大きな相乗効果が期待できます。
資格取得は決してゴールではなく、むしろキャリアアップへのスタート地点です。取得した知識を実務で活かし、環境問題の解決と企業価値の向上に貢献することで、あなた自身の市場価値とキャリアも大きく成長するでしょう。




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